Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第423夜

紅白交流



 前にも書いたかもしれない。正月ってあんまり楽しくない。
 これは盆もゴールデン ウィークも一緒かもしれないが、親戚が絡むと、予定を前もって立てることができない。
 遠くから帰省してくる人がいて、その人は、いつ来ていつ戻るか、ってことが決まっているのだが、迎える方がはなはだ暢気である。それに合わせて近場から帰省する人のことは放り出されるので、宴会をするのが「明日の夜」なんてのは早い方で、「今夜」とか言われてしまう。
 というわけで、1 週間も休みがあるのにまとまった時間を取れないので、ホームページの原稿を書き溜めておくことも、ピアノの練習もできない。
 このさいだからはっきり言うが、俺がここ数年、高校時代以来の仲間との新年会に参加できないでいるのも、それが原因だ。我々若い者は予定を立てて行動するのが当然だと思っている。ジャゴ (「在郷」つまり田舎) の人はそう思っておらず、しかも、自分の思い通りに人が動かないとゴチャゴチャと言う。だから人が減るんだよ、田舎は。

 さて、暮れと言えば紅白歌合戦である。
 この番組は長年、叩かれていて、確かに、なんじゃそりゃと思うことはないではない。
 だが、民放はどう? 格闘技とお笑いか。芸がないのはお互い様だろう。大体、暮れや正月だから一家揃ってテレビを見てるだろう、って発想をしてる時点で古臭い。そのタイミングで携帯電話のトラフィックが増えるのはなぜか、ってことはちょっと考えてみた方がいい。
 NHK-BS1 で夕方に「マイフェアレディ」をやってたが、地上波でも「ローマの休日」とかやってみ? 意外に数字取れるかもしれんぞ。

 登場順は無視、とりあえず方言の話を書いておくか。
 細川たかしの「下北漁歌」。どこの歌かは説明の必要はないと思うが、「いっちゃな」というのが繰り返して登場する。
 これをググってみたら、「いっちゃない (いいんじゃない)」が多数ヒットする。宮崎、福岡あたりである。
 浅香唯が「スケバン刑事」で「いっちゃがいっちゃが」と言っていた、というのはにも書いたが、それと同系統だと思われる。
いっちゃな」そのものは、北海道でも使われているようだ。下北と北海道は目と鼻の先だし、それはそうであろう、という感じ。

 早速、方言から離れる。
 Gackt の「君に逢いたくて」。あちこちで指摘されているようである。あれ、「あたたかった」って言ってるよな。
「あたたかった」そのものは、ググると山ほど見つかる。中には「あたたかった」と「あたたかった」の両方が登場するページもある。
 これは単なるミスタイプだからいい。
「君に逢いたくて」が問題なのは、おそらくたくさんいるスタッフの中で「『あたたかった』?」って疑義を呈する人が一人もいなかったのか? って疑わせてしまう、ってことである。前に、放送局が「○○年上旬」って書いてるのを見たことがあるのだが、ニュース番組なんかで指摘される間違った日本語と同類。
 同様のことが、藤あや子の「雪荒野」にも言える。一般に演歌には古臭い日本語が並ぶ。そんな中に「行かれない」というのが出てくるとギョっとする。

 実はこの辺、メモをとりながら見ていた。酔っているので情報が欠落している。
「一天地六」って歌詞が出てきて、これ何? と思ったのだが、サイコロのことらしい。なるほど。で、誰のなんという歌なんだろう。
「中実」という字もあった。“contents”のことであるとしたら、「中身」である。そもそも、普通の仮名漢字変換プログラムでは「中実」にはなるまい…ということは、詞を書いた人が、意図があってそういう字にしたのかな?

 さて、“W”の「ロボキッス」。
 この“W”って名前、ちゃんと考えてつけたのかな。
 いや、たまたまテレビで見てこの二人のファンになった! って言う人、ネットで検索するときに途方にくれるだろうな、と思って。これは、“NIFTY-SERVE”が“@nifty”になったときも言われたことだが。まぁいいや。
ロボットだっても」に違和感。
 詞はつんくだし、関西弁か、と思った。だからここに書いてるわけなんだが。意味が「ロボットだけど」「であっても」であることは説明不要だろうか。
 で、ググって見た。いや、これが、結構あるみたいなんだよ、こういう言い方。
 青空文庫によれば、堀辰雄の作品 (『卜居』) にもあるらしいんだが、文学作品を文法や表現の規範とするのは大間違いなので、参考にとどめる。
 それとは別に、「せんだって」という表現を使う人が多いのはちょっと意外だった。これって、古い表現じゃないの?

 へぇ、と思ったのは、「ロコローション」。
 有線で何回か聞いたことがあって、そのときは、なんだか寝ぼけた歌だなぁ、お笑いの企画もんか? と思っていたのだが、ORANGE RANGE のライブで聴くと結構いい。
 あと、ゆずのコーラス。たっけぇ声だなぁ。それだけで尊敬。

 普段から「近頃の若いもんは」と言ってはばからない父親が、一青窈の「ハナミズキ」を、これはいい、と言っていた。
 そういうことが全国的にあったかもしれない、というだけでも、紅白の存在意義はあると思うのだがどうか。





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