Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第329夜

秋田は田舎か



「帰ってきたウルトラマン」の DVD が発売されてから 3 ヶ月が経過した。2 巻づつなので毎月 \8,000 弱の出費。これくらいならなんとかなる。宇宙刑事シリーズの、毎月 4 巻というのは結構キツい。これも、まもなく完了する。後は「謎の円盤 U.F.O.」で DVD の出費は一段落する予定。

 オタクな話をしようとしているのではないのだった。
「宇宙刑事シャイダー」の第 36 話「ユメコン狂時代だ」に、島田 洋八氏が登場する。お父さん役で、地球侵略行為のゴタゴタに (コミカルに) 巻き込まれて、最後には、色々あったので故郷に帰る、と言うのだが、それがどこかというと、秋田なのだ。
 俺は当時、大学 2 年生で、雑司が谷で一人暮らししていたのだが、「うーむ、やっぱり『田舎』っつーと『秋田』なのか」と思ったのであった。*1

「帰ってきたウルトラマン」の 16、17 話「大怪鳥テロチルスの謎」「怪鳥テロチルス 東京大空爆」には、石橋 正次氏が登場する。
 このエピソードではゲストだが、翌年の「アイアンキング」で主役を張る。当時を知らない人にはピンとこないだろうが、石橋氏は当時、大人気の若手スターで、今で言ったら、ソリマチかオダが半年の特撮番組の主役をやったって位の話なのだ。
 実は石橋氏は変身しない。変身するのは、浜田 光夫氏である。そう、あの、日活青春スターの浜田 光夫氏。その人が「アイアンショック!」って。とんでもないシリーズである。
 だから、オタクな話をしようとしてるんじゃないんだって。
「帰ってきたウルトラマン」は昭和 46 年の作品だが、「サイケ」な時代を反映して、石橋氏は無軌道な暴走を続ける青年の役である。立てこもったビル (怪獣が巣を作っているので警察が突入できない) へ幼なじみが飛び込んで説得に当たるのだが、そのときの会話で、2 人が秋田県出身であることが判明する。ご丁寧に、ナマハゲの回想シーンまで登場する。
 この 2 作品の間には 15 年の月日があるのだが、秋田はその間ずっと、「日本の田舎」を背負いつづけていたわけだ。

 放送コンクールで、秋田の高校生が優勝した。
 秋田弁を使ったものらしい。
 女の子が、彼氏の前でつい秋田弁を使ってしまったが、彼氏はそういうところも好き、と答えるというものだそうな。
 やっぱり、秋田弁 (というより方言) は恥ずかしいものなのであった。本人は好きなんだそうだが、「モトカレ」の前では秋田弁を隠していたと言うから、気持ちと行動の間にギャップがある。大方の秋田県人がそういう風に感じつつ、そういう風に行動している。

 かく言う俺も、ほとんどの場面で共通語もどきをしゃべっているので、あんまりえらそうなことは言えないのだが、やっぱり恥ずかしい…のだろうなぁ。

 ふるさとの言葉に誇りを持て、という人は多いが、なかなかそう開き直れるものではない。自分がどんなに好きだって、他者から否定されちゃうわけだから。
 東京がそんなにいいか、とかいう反論もあるが、東京以外のところではどうだろう。おそらく、やっぱり笑われると思うのだが。うっかりすると隣県でも笑われちゃったりするのではないか。
 人はなぜ、自分と違うものに触れると笑ってしまうのか。それも多くの場合に嘲笑がこもっている、というあたりを研究してみる必要はあるのかもしれない。
 常に、自分よりも格下の存在が必要、というのは人間の性としてあるのかもしれない。この場合、「格下」というのは「上でない」という意味で、上であることが明確でないのであれば、下とみなしていい、という意識が、他者の方言を笑う根拠になっているのではあるまいか。
 その時に、標準語や東京が上に位置している、ということだろう。考え方としてはその順番か。

 県内で使ってて恥ずかしい、ってのは問題かもしれない。だって、ほとんどが内輪の人なんだから。
 そこに実際的な理由はないと思うんである。「県外に出たときに秋田弁しかしゃべれないと」とかいうのは、後付けだろう。まず、しゃべってはいかん、ということが既に刷り込まれてしまっているのだと思う。
 ここで思い出すのが、大阪の幼児が大阪弁をしゃべらなくなっている、というである。家庭では、少なくとも幼児に対しては大阪弁が使われていない。幼稚園などの「社会」に触れてから「習得」するものになっている。
 大阪ですらそうなのだから――と、ここで大阪を基準にするあたりもかなり情けないが、秋田においてをや。
 もう遅いのかもしれない。

 総務省が生活時間帯の調査をした。
 睡眠時間の長さでは、岩手・秋田・山形がトップ 3 である。
 でも、長いのと短いのとで 30 分しか差がないんだけど。1 時間も違う、ってんならまだしもなぁ。なんらかの説明をつけてくれないと、だから何? って聞かざるを得ないな、今のところ。

 なんかすっかりブルーな文章になってしまった。
 たまには、などいかが。“memories”に、素敵な詩が 2 編。




*1
 で、その DVD でシャイダーを見てみたら、そういうシーケンスはなかった。なんか別の話と混同していると思われる。(
)



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