渋谷に、
東京 FORT という異業種交流のための拠点がある。
「拠点」というと大げさに聞こえるかもしれないが、有志が金を出し合ってマンションを借りている。そこを、交流や勉強会の場所として使っているわけである。
普段は、いかにも「ビジネスマンの勉強会」的な話題が多いのだが、今年から「
FORT 文化大学」と銘打って、どちらかといえば知的好奇心方面、ビジネスとはあんまり関係のないテーマでの勉強会を展開している。
9 月の末に、その場所で、こともあろうに方言学の講義をしてきた。厚顔無恥とはこのことである。
ま、講義っつったって、ほとんどが、ネットワーク上なり、実際に顔合わしたりで、知った顔。
もともとの主旨が、タイトルにある通り、色んな方言現象に触れて、その差異と、日本語としての同一性とを楽しもう、というもの。車座になってワイガヤ風なので、非常に気楽なものである。
とはいえ、なんでも勉強材料にしてしまう人たちなので、みっともないこともできない。1 ヶ月以上も前からレジュメを作成し、ビデオやカセットテープも用意し、当日はプロジェクタにノートパソコンをつなげて、非常にマルチメディアな講義を繰り広げたのであった。目先でごまかそうとしたわけではない、多分、きっと。
レジュメはこんな感じ。
音韻
母音 | 関西型と関東型の「百三十円」 |
四つ仮名 | 「じ/ぢ」「ず/づ」 |
鼻濁音 | 秋田弁における「書ぐ」と「家具 (かく゜)」 |
アクセント | 無型アクセントの実例 |
語彙
文法
日本語の方言の諸相
賢明な読者はお気づきであろう。
この「方言千夜一夜」のこれまでの原稿と、NHK の「
ふるさと日本のことば」から面白そうなものをピックアップして並べただけである。
当日は、たまたま前日にメールのやりとりがあった Yeemar's HomePage の Yeemar さんにも参加してもらった。俺のウソを訂正してもらったり、参加者から言語現象を引き出そうとして誘導に失敗したときに助け舟を出してもらったりした。この場で、改めてお礼を。
参加者は 10 人ほど。出身地や生育地で言うと、北海道・東京・中国・九州が抜けている。他は、なんとなくカバーできた。
東京には方言がない、と思っている人がやはりかなりいるようなので、ぜひとも来て欲しかったのだが。いじめてやる、と六甲の人が言ってました。えぇ、俺じゃありません。
自信を持って言えるのだが、こういう会をやって、一番得するのは講師である。
事前準備や参加者からの訂正が勉強になるのは言うまでもないが、参加者の反応を見ることによって皆が知っていることとそうでないことがわかる。方言現象はともかく、「四つ仮名」って単語くらいは知ってると思いこんでいた。反省。
「そう言えば、こんな単語がある」ということで、俚言が多数集まる。方言に限らず、俺にとっては北陸って明確なイメージが湧かない地域なのだが、北陸の人が 2 人いて、大いに助かった。
角館出身の人がいたのだが、秋田市と角館でこんなに言葉が違うのか、という発見もあった。
プロジェクターを見る場合は灯りを消すし、話をしたりビデオを見たりするときは灯りをつける。その段取りによって、進行がズタズタになる可能性がある、ということも学んだ。
蛇足だが、「土佐における『おんし』と『おまん』」のフェーズで、南野陽子版の「スケバン刑事」が活躍したことは言うまでもない。
浅香唯版も用意したのだが、時間が無くて紹介できず。めでたくビデオを 1 セット入手できたのだが、改めて見てみると、何を言っているのかわからん場面がいくつかあるのだ。宮崎の方、なんかの機会に教えてください。
2 時間の予定だったのだが、大幅に超過。でも用意した材料全てを消化できなかった。
難しいなぁ、本当に。今度はうまくやろう。
今度?